粒子シミュレーションによる、電子ビームに伴う二流体不安定性に関する解析

グループ2A	岡崎 亘
		井町 智彦
		船津 大輔
		四竈 泰一

はじめに
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背景粒子と異なった熱速度を持つ電子ビームが存在する場合、電子はエネルギを
背景の電子もしくはイオンに移し、より安定な状態に移行しようとする。
背景電子が相手の場合と背景イオンが相手の場合で、それぞれ電子二流体不安定、
Buneman 不安定性という名前で呼ばれる。
本発表ではこの現象について、以下の4つの観点から粒子シミュレーションを
行った。


線形解析と粒子シミュレーションの結果比較
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ビームプラズマモデルでは、背景電子−ビーム電子間の二流体不安定性と背景イオン−ビ
ーム電子間のBuneman不安定性の2種類起こる可能性がある。
そこで背景電子の熱速度に着目し、最大成長率をもつ波数、時間的な波動成長率を理論と
シミュレーションで比較した。
CASE1    背景電子の温度が低い場合(電子二流体不安定性)を調べた。
        線形理論より最大成長率は0.35、そのときの波数は17。
        シミュレーションから最大成長率は約0.25、そのときの波数は約15
CASE2   背景電子の温度が低い場合(Buneman不安定性)を調べた。
        (背景電子の熱速度をCASE1の10倍)
線形理論より最大成長率は0.22、そのときの波数は12であった。
それに対し、シミュレーションから最大成長率は約0.12、そのときの波数は約10であった
。
結果として、デフォルトの初期設定では、理論とシミュレーションに相違があった。
そこで、解像度を10倍にして計算ところ、以前行った計算より線形理論に近づいた


ビームのドリフト速度変化と電子二流体不安定性との関係
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温度が低い電子とイオンからなる背景プラズマの中に電子ビームが存在すると、背景電子・
ビーム電子の間で二流体不安定性が起きる。
今回は、実際にVdを変化させて不安定性にビーム電子の速度がどのように関係してくるかを
調べてみた。
ドリフト速度が光速の10%のVdを変化させる前は、粒子の運動エネルギーが減少し電場の
エネルギーが増大し、背景電子とビーム電子のエネルギーの交換が行われているのがみてとれた。
ビーム電子のドリフト速度Vdを減少させた場合(Fig.1)、電場と運動エネルギーの変化量が減少し
不安定が小さくなっていくのがわかる。
対してVdを増加させた場合(Fig.2)、電場と運動エネルギーの変化量が増大し不安定性が大きく
成長しているのがわかった。


背景電子の熱エネルギ変化に伴う不安定性の変化
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電子が背景電子、ビーム、イオンが背景イオンの3つのMaxwell分布がある状況での二流体不安定性を
考えると、背景電子の熱エネルギが小さい場合には電子二流体不安定性、大きい場合にはBuneman
不安定性が観察される。
このことを、初期状態における背景電子の熱エネルギを変えつつ、各粒子の熱エネルギの増減を
観察することで確認した。
温度異方性は無いものとし、VparaとVperpを同時にそれぞれ1.0〜10.0まで変化させている。
結果を図に示す。各図において、横軸は初期状態からの経過時間、縦軸は各粒子および全体の
熱エネルギ量を示している。
ビーム電子の熱エネルギはどのケースでも減少傾向にあり、その行き先は背景電子の熱エネルギが
増大するにつれ、背景電子からイオンに移行する様子が観察された。


電子ビーム不安定性発生時のEEDF経時変化に関する考察
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基本課題1に示された条件下において1次元PICシミュレーションを実行し、その際、位置xに存在する
電子のエネルギー分布関数 (Electron Energy Distribution Function : EEDF)がどのように
時間発展するかという点に注目し、考察を行った。
考察を行う上での解析手法としては、kempo1によって行った各タイムステップごとの計算結果から
任意の位置x近傍に存在する粒子の速度を読み込み、それらのEEDFを計算するプログラムを作成し、
経時変化するEEDFを見ることによって行った。
解析の結果、t=0において2成分に分かれて存在したEEDFが、不安定性によって励起されるモードの
最大成長率の逆数程度の時間スケールにおいて緩和され、Maxwell分布に近づくことが確認された。
しかし、不安定性によって形成されたポテンシャルの井戸は十分な時間が経過した後にも残存し、
井戸の中心近傍におけるEEDFはビーム成分が残ったまま存在し続ける事が確認された。

fig1


fig2