ハイブリッドシミュレーションで解くイオン2流体不安定性

メンバー:高田、丹所、中田、古谷

ハイブリッドシミュレーションはイオンを粒子、電子を流体と近似して行うシミュレーション手法である。この手法は、取り扱う現象が、イオンのダイナミクスが支配的である、つまり電子のダイナミクスを考えなくても良いような状況において有効である。このハイブリッドシミュレーションを用いて、イオン2流体不安定性についての実験を行った。 イオン2流体不安定は、背景のイオンに対し、相対的な(ドリフト)速度を持つイオンの分布(イオンビーム)がある場合、各イオンが電場にエネルギーを与え、安定な速度分布に落ち着こうとして励起される不安定である。この場合、電子の運動はイオンの運動に比べて非常に速いため、素早く緩和されてしまうであろう、と考えられる。したがって、イオンのダイナミクスの効果が支配的となり、ハイブリッドシミュレーションを行うことが可能と考えられ、全粒子コードに比べ、短時間で計算できるというメリットがある。そこで、このイオン2流体不安定をハイブリッド・コードを用いたシミュレーションを行い、その性質を明らかにしようとした。

はじめに、線形解析によって様々な場合の不安定成長率を求めた。イオンビームのドリフト速度、背景プラズマに対する密度によって不安定成長の様子が違ってくることがわかった。いくつかの速度、密度を変化させたとき、(1)右に進むモードのみ成長する場合(2)右に進むモード、左に進むモードともに同程度に成長する場合、(3)左に進むモードが発散する場合、の大きく3つのパターンに分けられることがわかった。これらは、密度比、ドリフト速度を大きくしていくにつれ、(1)→(3)と変化していくという結果を得た。さらに、シミュレーションから得られた結果から成長率を求めたところ、(1)、(2)のケースではだいたいあっていると考えられるが、(3)の場合はうまく合わなかった。これは(3)のシミュレーションでは、(負の)波数が大きいために、グリッドサイズをこの波を解像できるだけ細かくとらなかったためではないかと考えられる。そうではあるが、ハイブリッドシミュレーションによってイオンダイナミクスによって引き起こされるイオン2流体不安定は理解できるといえる。

また、電子は重要でない、と考えてハイブリッドシミュレーションを行ったわけであるが、実際、電子のダイナミクスがおよぼす影響を考えることも重要である。そこで、同様のパラメータ設定を用いて、全粒子コードを用いたイオン2流体不安定のシミュレーションを行おうと試みた。しかし、イオンの空間、時間スケールが電子の数十倍となってしまうことから、粒子コードを用いたシミュレーションでは、計算時間が(限られた時間の中では)足りない、ということがわかった。しかし、今回のスクールでは実行できなかったが、是非ともチャレンジしてみたい問題であり、そこから何かを引き出すことができれば、今回のスクールに参加した意義は非常に大きかったと言えるであろう。
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