MHD Simulation and VRML




「地球磁気圏のMHDシミュレーションとVRMLによる3次元可視化」

    荻野竜樹 名古屋大学太陽地球環境研究所
    Tatsuki Ogino (Solar-Terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University)

    1.全体計画と了解事項

    天体シミュレーション実施支援システムは国立天文台に、スペースプラズマシ ミュレーション実施支援システムは京都大学宙空電波科学研究センターに置き、 ネットワークを介して両者を共有化するシステムを開発し、各研究グループか ら利用できるようにする。

    2.MHD/流体モデル班

          荻野竜樹(名古屋大学太陽地球環境研究所)
          品川裕之(名古屋大学太陽地球環境研究所)
          上出洋介(名古屋大学太陽地球環境研究所)
          田中高史(郵政省通信総合研究所)
          渡部重十(北海道大学理学研究科)

    3.平成12年度の研究開発内容及び3年計画で目指す研究開発内容

    (1) 標準MHD/流体コード開発
      ・何種類あってもよい。
    (2) インターフェイスの開発
      ・他の人が利用できるようにするため。
      ・入力パラメータの設定
      ・ネットワークを通しての計算実行依頼と結果の取得
    (3) 共通データ解析システムの開発
      ・AVSによる共通化
      ・VRMLによる3次元可視化ツールの開発
    (4) コンテンツの作成と共有データベース化
    (5) 教材や知的データベースの作成

    3.1 計画案1(荻野)

    (1) 平成12年度の研究開発内容
      ・一つの標準MHDコード開発・提供
      ・VRMLによる可視化ツールの開発と標準化
      ・ネットワークと通しての利用促進
      ・地球磁気圏における磁気リコネクションの研究
      ・観測データをインプットとした地球磁気圏のシミュレーション

    (2) 平成12ー14年度の3年計画で目指す研究開発内容
      ・標準MHDコード公開とネットワーク利用
      ・VRMLによる可視化の統合(ネットVR、又はWeb3D)
      ・地球磁気圏のグローバルMHDシミュレーションによるコンテンツの作成
      ・MHDシミュレーション教材や知的データベースの作成

    (3) VRMLに直結したスペースシミュレーションデータの3次元可視化方法の確 立と得られたコンテンツを即座に呈示するための具体的研究開発内容

      ・フォートランとC言語によるVRMLコンテンツ作成用のインターフェース
        サブルーチンパッケージを作成
      ・スペースシミュレーション3次元データを入力として、上記のパッケージを
        組み合わせた応用プログラムを作成して、動画作成とマルチメディアとの融
        合を含んだ3次元可視化のためのVRMLファイルを作成
      ・従来から利用してきた、3次元画像処理用ソフトウエアによる画像ファイル
        間の変換、及びVRMLファイルとの間のファイル変換ツールを開発して、
        VRMLファイルの効率的な作成環境を実現
      ・スペースシミュレーションの3次元データの可視化と呈示に適用して、開発
        するシステムの有効性を実証し、シミュレーション結果を開示
    

    3.2 計画案2(上出)

    (3) 地上磁場、電離層電場/電流、沿磁力線電流、磁気圏、太陽風をつなぐコードの開発を提案します。

    3.3 計画案3(田中)

    (4) MHDのスキームに関してはある程度確定してきたと思いますが、これ からは問題適応性、保守性、各モジュールの独立性などが考慮された、次 世代に引き継げつるようなシステムの開発が必要と思います。そのため格 子生成、フラックス計算、グラフィックなどをオブジェクト指向(のよう なもの)で統一したシステムを目指し、まずはオブジェクト指向とは何か、 どのような方法をとるのか、MHDにどう応用するかなどを調査したいと思い ます。

    そのため本年度調査費を用意し、流体研に調査を依頼する予定です。レポ ートは皆さんに配布します。また藤田さんにご協力いただき、気象庁のシ ステムを調査したいと思います。


      「地球磁気圏のMHDシミュレーションとVRMLによる3次元可視化」

               荻野竜樹(名古屋大学太陽地球環境研究所)

      1 はじめに

       太陽地球間の環境変化の要因を調べることは、人間の活動が宇宙へ拡大しつつある今日、 極めて重要な課題となってきた。人が人工衛星の外に出て活動する場合、太陽からの大量の 高エネルギー粒子の突発的な飛来は、人の健康にとって大変危険であるし、また、人類に多 大の恩恵をもたらしている通信・放送・気象用人工衛星の安定な運用にも重大な障害をもた らすのではないかと懸念されている。こうした観点から、太陽地球間の諸物理量をいつもモ ニタリングして、時々刻々の環境変化を予報することの重要性が国際的に認識され、並行し て宇宙天気予測をより確実性の高いものにしていくために、信頼性の高い数値予測モデルを 構築する基礎研究が宇宙天気プログラムとして近年注目されてきた。

       地球環境の源となる太陽は光・電磁波とともにプラズマの風(太陽風)を絶えず放出して いる。光・電磁波に比べてそのエネルギーは小さいけれども、太陽風は地球などの惑星の周 りの磁気圏・電離圏環境に最も大きな影響を与えている。太陽風は地球の固有磁場を押しつ け、包み込むように下流に流れ去るので、地球磁場は吹き流しのように下流に伸びた地球磁 気圏を作り出す。太陽風と太陽風に伴われて太陽から流れてくる惑星間磁場(IMF)によ ってどのような磁気圏が形作られるか、どのような条件の時に磁気圏に多くのエネルギーが 流入し、磁気圏・電離圏がどのように振る舞うのかを理解するのが太陽風磁気圏相互作用の 主な研究目標である。

       近年、衛星観測によって太陽風や磁気圏の平均的な構造と平均的な物理量はかなり明らか になってきた。また、最近の衛星の連繋観測では、太陽風や磁気圏・電離圏のキーポイント で物理量を同時観測することによって、太陽風ー磁気圏ー電離圏間のエネルギーの流れと物 理機構を明らかにしつつある。しかし、衛星観測は時空間の軌道上の線に沿っての物理量観 測が基本であるため、時間と空間との分離ができず、また空間の同時観測点も衛星の個数に よって限られる。こうした観測点間を結ぶものとして、計算機シミュレーションに対する期 待が近年高まってきた。

       こうした状況下、私たちもその一翼を担い、3次元グローバル電磁流体力学的(MHD) シミュレーションから太陽風地球磁気圏相互作用を調べ、IMFや太陽風動圧の変化に伴う 地球磁気圏の応答を調べるとともに、電離圏の効果を含めるようにモデルの拡張を図ってい る。その太陽風磁気圏相互作用の複雑なシミュレーション結果を理解するためには可視化は 必須である。特に、重要でかつ面倒な2つの機能にアニメーション動画と3次元可視化があ るが、アニメーション動画は時間変化を示すことによって磁気圏ダイナミックスの理解を助 け、3次元可視化は磁気圏の流線、磁力線及び電流構造の特徴を明らかにするのに威力を発 揮する。さらに、最近話題になっているインターネットによる情報公開は、簡単にはできな いような自己矛盾のないシミュレーション結果を誰もが即座に見ることができ、現象をより よく理解する上で強力な手段となりつつある。

      2 シミュレーションモデル

       太陽風磁気圏相互作用の3次元MHDモデルでは、MHD方程式とマックスウェル方程式 を初期値境界値問題として、様々な方法でその時間発展を解いている。偏微分方程式を差分 化して 2 step Lax-Wendroff法で解く方法などはその例である。空間分解能を上げるための 計算方法における様々な工夫として、非一様格子法、非構造格子法、自動調節格子法、時空 間多重格子法の導入などが行われている。

       以下では、私達が用いている高精度計算法の一つである modified leap-frog 法について 簡単に述べる[1,2]。シミュレーションには、図1に示すような太陽方向x軸正、夕方向 y軸正、磁気北極方向z軸正とした太陽地球磁気圏座標系を用いて、MHD方程式とマック スウェル方程式を時空間で差分化して、MHD方程式系における8個の物理変数、プラズマ 密度ρ、速度v、圧力p及び磁場Bの時間発展を解く。数値計算法としては、最初の1回を two step Lax-Wendroff法で解き、続く (l-1)回を leap-frog法で解き、その一連の手続き を繰り返す。l の値は数値的に安定の範囲で大きい方が望ましいので、2次精度の中心空 間差分を採用するとき、数値精度の線形計算と予備的シミュレーションからl = 8に選ん でいる。Modified leap-frog法は、two step Lax-Wendroff法の数値的安定化効果を一部取 り入れて、leap-frog法の数値的減衰と分散の小さい効果をより多く取り入れた、数値的減 衰と分散にバランスの良くとれた一種の組み合わせ計算方法となっている。また、パラメ ータを変化させることによって、性質の良く分かった2つの計算方法に一致させること ができるので、結果に与える数値誤差の影響も理解し易い利点を持っている。

       初期条件には、「対称面より上流で零のミラーダイポール磁場」と「重力とプラズマ圧力 が静的に釣り合った球対称の電離層」を仮定し、シミュレーション箱の上流から一定の密度、 速度、温度を持つ太陽風を流し始めて、定常状態に近い磁気圏の構造を求める。初期にミラ ーダイポール磁場を用いる理由は、上流で流れに平行な磁場成分を含めないためである。境 界条件としては、上流は固定端、側面と上下面は磁気圏前面に形成される衝撃波の形状を考 慮して、x軸と45度の角度を持たせた自由端、下流は面に垂直な方向に自由端、地球の中 心を通るy=0又はz=0の面では磁場と速度のベクトルと矛盾の無い鏡像の境界条件を課 す。更に、太陽風やIMFのパラメータを時間変化させて、磁気圏・電離圏の応答や擾乱現 象を調べる。

      3 地球磁気圏のグローバルMHDシミュレーション

      これまで述べたように、太陽風地球磁気圏相互作用の3次元MHDシミュレーションでは、MHD 方程式とMaxwell's equationを差分化してModified Leap-Frog Methodで初期値境界値問題 として解き、太陽風と惑星間磁場の変化に伴う地球磁気圏の応答を調べている。このために、 外側の境界をできるだけ遠ざけて境界の影響を少なくすると共に磁気圏尾部の計算領域を広 げて遠尾部構造を調べ、かつ空間分解能をできるだけ上げようとしていますので、どうして も3次元格子点の数をシミュレーションの限界まで増やすことになる。そのMHDシミュレー ションの例を第2図と第3図に示している。第2図は、惑星間磁場が北向きでかつ夕向きの 場合の定常状態の地球磁気圏の3次元磁力線構造を示している。磁気圏境界の磁気リコネク ションが北半球では夕側、南半球では朝側の高緯度尾部領域で起こるために朝夕非対称の磁 力線構造になっている。第3図は、太陽と地球の間で太陽風と惑星間磁場を観測している ACE衛星の1分毎のデータを計算のインプットとして用いた場合に、3次元グローバルMHD シミュレーションから得られた地球磁気圏のスナップショットの例を示している。これは、 国際宇宙天気研究プロジェクトの一環として、時々刻々の太陽地球環境の変化を知るための 数値モデル開発基礎研究の一翼を担うものです。このような地球磁気圏の3次元グローバル MHDシミュレーションは、VPP5000/56でも計算をつないで合計50〜300時間の計算時間を必要 とする。

      4 動画の作成方法

       3次元のMHDシミュレーションで何が得られているかを知るためには可視化は必要不可 欠であるが、従来はコンピュータの種類と用いる画像処理ソフトウエアの種類によってその 画像処理の方法はまちまちで、コンピュータの利用環境が変わるたびに対処しなければなら ないのが常であった。この画像処理を統一的に行うためには、次の3つの条件が満たされる 必要がある。

        (1) コンピュータの種類に依存しない方法の確立
        (2) ソフトウエアなど全てを自分たちでコントロールする
        (3) プログラムなどできるだけ統一的に(共通に)扱う方法の確立

      これを逆にいえば、コンピュータに依存したソフトウエアや言語・仕様は使わない、また、 特定の業者のみが販売する画像処理応用ソフトウエアは使わない、ということになる。

       画像処理と図形出力の統一的な扱いは、PostScript画像ファイルを直接作成することで実 現できることが分かった。私達が現在行っているコンピュータシミュレーションの画像処理 の統一的な方法を項目としてまとめると次のようになる。

        (1) シミュレーションデータをIEEE Binary形式で保存
        (2) FortranプログラムでPostScript画像ファイルを直接に作成
          PostScriptファイルを作成するためのInterface Subroutine Packageを作成
        (3) PostScriptファイルからファイル変換ツール(xv, pstogifなど)で圧縮された
          画像ファイル(gifなど)を作成
        (4) 圧縮画像ファイル(gifなど)をWWWで公開

      この方法により、Fortranが使えて、その中で大文字と小文字の区別ができれば、コンピュ ータの種類によらずにPostScript画像ファイルを作って図形出力を取り出すことが可能にな った。

       時間変化をみるためには、アニメーション動画の作成も重要である。しかし、コンピュー タシミュレーション結果からのアニメーションビデオ動画の作成は必ずしも容易ではなく、 従来画像処理専用機と専用ソフトウエアを用いる必要があった。私達は、ビデオ自動コマ撮 り機能を持つ3次元画像解析装置として、クボタコンピュータ社製のTITAN(3次元画像処理 ソフトウエアDore)、SGI製のIndigo-2(Open-GL及びAVS[Application Visualization System])及び流体研究所製のICFD Aleph(Perception Video Recorder)を用いてきた。こ のようにして、アニメーションビデオの作成方法は確立したが、ビデオを作成する方法に替 わるものとして、コンピュータで動画ファイルを直接に作成してプレゼンテーションにも用 いることができ、その方が作成も容易で、画像も鮮明、かつ画像フレームの一時停止や逆回 しなど、多くの機能をプレゼンテーション時に利用できることが判った。即ち、コンピュー タ内でアニメーション動画ファイルを作成し、パーソナルコンピュータと接続されたプロジ ェクターで呈示することが簡単に行えるようになった。

       私達が行っているコンピュータ内でのアニメーション作成の方法は、SUNワークステー ションでは、多数のgif画像ファイルからPDS(Public Domain Software)のgifmergeを用い てgif movie file を作成し、xanimを用いてmovie playすることによってアニメーション動 画を表示している。これは、すべてSUN内で実行できる。また、gif movie fileはパーソ ナルコンピュータでも見ることができる。このgif movie fileはQuickTime formatに比べて、 動画ファイルの容量が磁力線などの線画で20%程度以下、カラー面画で50%程度以下と 小さいのが魅力の一つである。movie playerの一つであるxanimは、十分な機能を持った小さ なコントロールパネルが別に表示され、どこにも自由に移動することができて取り扱いも容 易なので、パーソナルコンピュータでも利用できるようになると大変便利ではないかと思っ ている。

       パーソナルコンピュータでは、アニメーション動画としてQuickTime形式を主に利用してき た。これは、MacintoshとWindowsの両方で見られる利点があるが、ファイル容量が大きくな る欠点がある。作成方法は、多数のgifファイルをIndigo-2のmovie convertでQuickTime formatの動画ファイルに編集して作り、xanimやmovie playerなどの動画ビューアでアニメー ション動画を見ることができる。これらの全ての動画ファイルは、そのままWWWで公開す ることもできる。

      5 3次元可視化とVRML

       3次元の磁力線構造などを理解するために、座標軸を回転させて動画を作ることもよく使 う方法である。市販のAVSなどの3次元画像解析ツールなどは、大変便利で有意義なものであ るが、3次元画像表示はあまりにも多様性があるので、本当に描きたい図を描こうとする場 合、どうしても物足りない部分が出てくる。こうした場合、画像処理の基本プログラムを組 むことになる。私達はこれを3次元画像解析専用機TITANやIndigo-2、及び3次元画像処理専 用ソフトウエアDore、AVS、Open-GLを用いることによって実行してきた。3次元空間で磁力 線を描き、専用機のZバッファなどの3次元画像処理機能を用いて、対象物を即座に回転し たり、拡大縮小することにより、見易い視点を選んで3次元構造の理解に役立ててきた。

       しかし、VRML(Virtual Reality Modeling Language)の登場のよって、3次元画像処 理専用機と3次元画像処理専用ソフトウエアを持たなくても、誰でもVRMLのビューアさ えあれば3次元画像を自分の好きなように見ることができる状況が実現した。自分のコンピ ュータの能力に依存して3次元画像処理(回転、拡大縮小など)の速度は決まるが、最近の ネットスケープやインターネットエクスプローラなどのブラウザを使えば、VRML2.0対応 のcosmo player等のビューアが標準で付いている。パーソナルコンピュータも最近高速にな ってきたので、高速のcpuとグラフィックアクセラレータを積み、更に十分なメモリ(128 MB 以上)を載せれば、SGI製のIndigo-2に劣らない性能を発揮できる。また、精度の高い3次元 画像を快適に見たいのであれば WebspaceやSGI のCosmoworldsの利用が更に有効である。

       VRMLファイルの作成をどう実現するかであるが、私達は、VRMLファイル作成のた めの Fortran Interface Subroutine Packageを準備し、フォートランプログラムを用いて、 3次元シミュレーションデータから直接にVRMLファイル(*.wrl)を作っている。これは 3次元と2次元の違いはあるが、PostScript画像ファイルを作成する方法と同様の方法であ る。そのVRMLによる地球磁気圏の3次元可視化の具体例をWebspaceビューアを用いて図 4にに示す。磁力線とプラズマ温度を描いている。プラズマシートの縞構造と磁力線の歪み がはっきりと見られる。VRMLのビューアには通常視点を移動するwalkモードと対象物を移動・ 回転・拡大縮小するexamineモードがあり、磁気圏の3次元構造をより詳しく調べることがで きる。これらの機能は、高空間分解能のMHDシミュレーションにおいてグローバルな構造 とその中で起きる磁気リコネクションの微細構造の関係を見るのに大変有効である。

       地球に近い尾部リコネクション領域をみると、プラズマ温度の高い部分が朝夕方向に波状 に発生し、しかもマグネトシースよりも3〜5倍は高温になっているのが分かる。この結果 はプラズマシートの高温化に尾部リコネクションが寄与していることを明確に示している。 IMFが南向きになった直後(t=302m)、尾部リコネクションの開始時(t=342m)及び急激な発 展時(t=350m)の特徴的な磁気圏構造を示すVRMLの3次元可視化ファイルも与えてある。 現在の重要な問題点は、地球磁気圏の3次元磁力線描画のVRMLファイルがasciiファイル を用いているために数MBと非常に大きくなることである。これらの問題も圧縮VRMLフ ァイルを標準に用いるとか、VRMLバイナリーファイルを用いることによって、かなり改 善されることが期待される。太陽風やIMFの変化に伴う地球磁気圏の時間変化の3次元動 画をVRMLで表示するのは今後の最も興味ある課題である。

      6 まとめ

       太陽風磁気圏相互作用の3次元グローバルMHDシミュレーションは、約16年前に、力 が釣り合った平均的な磁気圏の形をやっと再現できるところから出発して、発展を続け、最 近では、衛星・地上観測と比較して磁気圏のダイナミックスを議論できる程度にまで成長し てきた。こうして、上流の太陽風やIMFの変化に対する磁気圏・電離圏の応答や、磁気圏 での大きな擾乱現象であるサブストームや磁気嵐を直接MHDシミュレーションから調べよ うとする試みも行われるようになってきた。これらの太陽風磁気圏相互作用のグローバルM HDシミュレーションを精度良く計算するためには、計算方法の改良が一方で必要であると 同時に、最大級のスーパーコンピュータの利用は不可欠である。

       太陽風と地球磁気圏相互作用のシミュレーション結果を理解し、更に、人によりよく理解 してもらうためには可視化は必須であり、アニメーション動画の作成と3次元可視化/3次 元画像解析は極めて強力な威力を発揮する。シミュレーション結果からのアニメーションビ デオ作成も、コンピュータ内のアニメーション動画作成に取って代わられようとしている。 ここに示した、IMFの回転に対する地球磁気圏の応答及び太陽風の動圧変化とIMFの逆 転に伴う地球磁気圏の応答の高空間分解能3次元シミュレーション結果は、動画によってそ の複雑な振る舞いを一目瞭然にすることができる。更に、3次元画像処理専用機と専用ソフ トウエアがなければ不可能であった3次元画像解析が、VRMLの登場によって誰にでもす ぐに手にすることができるようになった。その有効な具体例も高空間分解能MHDシミュレ ーションによる尾部リコネクションの3次元可視化として示した。そして、VRMLをめぐ る利便さの環境は信じられない速さで進歩している。

       こうして、太陽風と磁気圏相互作用のシミュレーション結果のアニメーション動画と3次 元可視化(VRML)による情報公開も実現できるようになってきた。今後、更に魅力ある スペースプラズマの3次元シミュレーションを行い、効率的でかつ統合的なシミュレーショ ンデータフローシステムを構築して3次元シミュレーションデータを開示していくことが強 く望まれる。これは、また宇宙天気プロジェクトにおいて、太陽風磁気圏電離圏相互作用の 3次元MHDシミュレーションデータの準リアルタイム交換を実現するための最も有効な方 法ともなり得る。

      謝辞
       本稿のコンピュータシミュレーションは、名古屋大学大型計算機センターを利用してなさ れたものである。また、動画作成に協力頂いた、名古屋大学太陽地球環境研究所の太田幸一 氏に感謝いたします。

      参考文献

      [1]T. Ogino, R.J. Walker and M. Ashour-Abdalla, IEEE Trans. on Plasma Sci.,
         20, 817 (1992).
      [2]T. Ogino, R.J. Walker and M. Ashour-Abdalla, J. Geophys. Res., 99, 11,027
         (1994).
      [3]R.J. Walker and T. Ogino, J. Geomag. Geoelectr., 48, 765 (1996).
      [4]A. Nishida and T. Ogino, AGU Mono., 105, 61 (1998).
      [5]T. Ogino and R.J. Walker, Proc. of Int. Conf. on Substorms-4, (ICS-4),
         Hamanako, Japan, 527 (1998).
      [6]荻野竜樹、「太陽風磁気圏相互作用の計算機シミュレーション」,
         名古屋大学大型計算機センターニュース, Vol.28, No.4, 280-291, 1997.
      [7]荻野竜樹、「太陽風と磁気圏相互作用の電磁流体力学的シミュレーション」,
         プラズマ・核融合学会誌,CD-ROM 特別企画(解説論文),
         Vol.75, No.5, CD-ROM 20-30, 1999.

      図説

      図1 MHDシミュレーションに用いた太陽地球磁気圏座標系。
      図2 惑星間磁場が北向きでかつ夕向きの場合の定常状態の地球磁気圏の3次元磁力線構
         造。磁気圏境界の磁気リコネクションが北半球では夕側、南半球では朝側の高緯度
         尾部領域で起こるために朝夕非対称の磁力線構造になる。 VRML90 VRML60
      図3 太陽と地球の間で太陽風と惑星間磁場を観測しているACE衛星の1分毎のデータを
         計算のインプットして用いた場合に、3次元グローバルMHDシミュレーションから
         得られた地球磁気圏のスナップショットの例。 VRML2
      図4 VRMLにより可視化された、惑星間磁場が南向きの場合の地球磁気圏の3次元構
         造。パッチ状でかつ間欠的な尾部リコネクションが起こるため、プラズマシートに
         縞状の構造が現れる。


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