プラズマ波動不安定性の粒子シミュレーション I

研究者名 大村善治、小島浩嗣、松本紘 (京都大学生存圏研究所)
データベース名 プラズマ波動不安定性の粒子シミュレーション I
提供機関名 京都大学生存圏研究所
概要 このデータベースでは、宇宙空間で生起しているプラズマ波動の中でも最も基本的でプラズマ粒子のエネルギー変換・運動量輸送に大きな役割を果たしている静電波が、熱雑音を種として成長して飽和しさらに非線形波動として発展してゆく物理過程を、粒子モデルの計算機シミュレーションによる再現している。ドリフト速度の異なる2つの電子ビームが共存する状態では、いわゆる二流体不安定性が起こる。最初は、熱雑音から線形成長率に従って波が成長するが、その振幅が大きくなると、電子ビームが成長してきた静電波ポテンシャルに捕捉されて、2つの電子ビームが熱化される。隣合う連続したポテンシャル構造は、相互に合体して、さらに大きなポテンシャル構造となって成長し、その合体を繰り返してポテンシャル構造は孤立波となってゆく。この現象は、1960年代から実験室プラズマおよびブラゾフコードによるシミュレーションによって見つけられ、電子ホールと呼ばれ、1957年に発表されたブラゾフ方程式のBGK平衡解に対応するものと考えられていた。1992年に日米共同プロジェクトとして打ち上げられた科学衛星GEOTAILに搭載されたプラズマ波動観測装置の波形観測によって、宇宙空間においても電子ホールに相当する静電孤立波(Electrostatic Solitary Waves: ESW)が存在することが報告されたことで新たに注目を集め、その後の衛星観測によっても地球磁気圏の様々な領域で同様の孤立ポテンシャル構造が存在することが報告されている。ここに収録した電子ビーム二流体不安定性は、磁力線に沿って発達する最も基本的な非線形過程の一つであり、線形理論では記述できない電子ビームのダイナミックな振る舞いを経て、安定した静電孤立波が形成される過程を見ることができる。本シミュレーションで形成されるポテンシャル2つの電子ビーム全体を捕捉して、それを熱化させている。このような大振幅の静電孤立波が形成されるためには、背景のイオンの熱速度が十分に大きいことが必要条件となることが、収録されている異なるイオンの熱速度のもとに行った2つのシミュレーションランを比較することにより理解することができる。

本データベースには、背景のイオン温度が異なる2つのシミュレーションランの結果が詳細に収録されているが、その中でも、特に(X,Vx)の位相空間で個々の粒子の位置をプロットした下図に示すような位相ダイアグラムでは、ダイナミックに変化する電子の振る舞いを見ることができる。赤、黄色、水色の点はそれぞれ、イオン、電子ビーム1、電子ビーム2を構成する粒子の一部をプロットしたものである。初期において電子ビーム1はイオンと共に静止しており、電子ビーム2は電子ビーム1に対してVd = 20 Veの速度でドリフトしている。ここで、Veは二つの電子ビームの初期熱速度である。 イオンと電子の質量比は100として計算している。時間は両方の電子ビームを合わせた全電子密度から計算されるプラズマ角周波数の逆数で規格化されている。すなわち、TINE=6.28がプラズマ振動の1周期となる。このデータベースに収録された計算機シミュレーションについての詳しい内容は、次の文献に述べられている。

Y. Omura, H. Kojima and H. Matsumoto, Computer Simulation of Electrostatic Solitary Waves: A Nonlinear Model of Broadband Electrostatic Noise, Geophysical Research Letters, vol. 21, pages 2,923-2,926, 1994.The simulation code used in producing the present database. is a one-dimensional elelctrostatic coode.



尚、このデータの作成に使われたシミュレーションコードについての解説は以下の文献に詳しく述べられている。

Y. Omura and H. Matsumoto, KEMPO1: Technical Guide to One-Dimensional Electromagnetic Particle Code, Computer Space Plasma Physics: Simulation Techniques and Softwares, edited by H. Matsumoto and Y. Omura, pages 21-65, Terra Scientific, Tokyo, 1993.



問い合わせ先 大村善治
京都大学生存圏研究所
〒 611-0011宇治市五ヶ庄
TEL: 0774-38-3811
omura[AT]rish.kyoto-u.ac.jp
公開情報

../sramp/cdrom/sm0004/index.html

関連情報: GEOTAILプラズマ波動観測のホームページ

http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/space/gtlpwi/

CAWSES & S-RAMP CD/DVD-ROM SM0004